アンチ成人式ガール
「振袖はどうするの?早く決めないと良い着物無くなっちゃうよ」
別々に住んでいる両親から、時たまこういった連絡が来る。はっきり言って、成人式に出たいなんて一言も言っていないのだが、これは一体どういう事だろう。
人生の門出なんてクソ喰らえだ。生きていれば歳をとる、たったそれだけの事なのに。
両親の離婚が原因で、小中エスカレーター式の小規模校に転校した。私を含めて6人ぽっちしかいない教室、全校生徒よりも多い職員。ひとクラス30人が当たり前だった私は、余りのギャップに打ちひしがれた。それでも友達を作らなければ生きていけないと悟り、元気いっぱいに自己紹介をした記憶がある。この日を境に、9年間も虐められることになるなんて!
多少の知恵が付いた子供は残酷だ。思った事をぽんぽん吐き出す化け物だ。
金曜日は土日に備えて小説をたっぷり借りて帰った。お陰様で学校の誰よりも国語に強くなった。国語のテストでだけ、私はクラスの女王になれたのだ。
当時の私は何処に行っても安心する場所がなくて、今思えば良くもまあ9年間の間耐え忍んだなと思う。ぽっくり死んでいてもおかしくはないのに。
道徳の授業では皆で机をくっつけ合うのだが、いつも私とクラスメイトの机のあいだは2センチほど空いていた。おいおい、道徳の授業ですよー、と。行動がチクチクですよー、と。思い出せば思い出すほど嫌なことや憎たらしいことが思い出されて苦しい。
成人した私に今一度問いたい。
このクラスメイトたちと晴れ着を着て祝い会いたいのか?と。
答え 質問自体が愚問。
6歳から変わらず、私はあの当時のクラスメイトを脳内で滅多刺しにして殺しているのだから。もしかしたら着物の間に出刃包丁を忍ばせているかもしれない。
苦労は買ってでもしろと言うらしいが、死ぬまで心を蝕むような苦労はしないほうがいい。私はきっと死ぬまでこの過去を背負って生きていくのだろう。どう足掻いても、自分の悲しさは自分にしか分からない。不毛だ。
どれだけ嫌なことが積み重なっていても尚生きているのは死ぬことに対して興味が無いから。変なところで能天気な性格で良かったとつくづく思う。きっと訳が分からんタイミングであっさり死にそうだ。私が死んだら爆笑してほしい。私はあなた達が死んだら、きっとすごく泣いてしまうけれど。
みんな、明日も適度に生きようね。