夜を抱き締める

物心ついた時から夢の中の時間帯は夜だった。

藍色の世界で染められた時間。夢の中の私は真夜中に行動していることが9割と、非常に高確率だ。心理学的に何かあるのでは?と思うけれど、夢占いのサイトには大したことは書いていない。

今の仕事を始めてから4時や7時と、なんなら明け方に眠ることが多いのに夢の中は決まって夜だ。夜に対しての執着心が人一倍強いのだろうか。

夜の遊園地、夜の校舎、行ったこともないところばかり。夢の中の私はいろいろな場所で夜をエンジョイしているのだ。そして大抵は会ったこともない人達と他愛のない会話をしている。

よく会う友人や恋人が出てくるのはかなりレア。夢日記を付けてみたいなと思うことがあるけれど、いい噂は聞かないので書かないことにする。

 

夜は好きだ。静かで。特に夜の海が好きだ。小学生の頃、海まで徒歩5分という最強な立地に祖母宅があったので、家を抜け出して海を見に行っていた。紺から群青、紫から橙へと変わっていく空をぼうっと見ているのが好きな小学生だった。きっと、夜釣りのおじさん達は「なんでこんな時間にパジャマ姿の女の子が…」と思っただろう。今思えばめちゃくちゃ危険だなぁ。案の定家に帰るとしこたま怒られた。当たり前だ。

 

 

仕事終わり、送りの車に乗り込むと街の光が次々と流れていく。この灯りの数だけ人が居るのだと思うと、変なの、と思う。人の姿など見えないのに。世界の輪郭がぼやける夜。今日も私は夜を抱きしめて眠る。